社宅・住宅手当・食事補助と企業型DC どの福利厚生が会社の未来をつくるのか?
前回は、退職金制度と企業型DCの違いについてご紹介しました。
今回は、多くの中小企業で導入されている「社宅・住宅手当」「食事補助」と企業型DCを比較してみます。
これらはいずれも人気の高い福利厚生ですが、その役割は大きく異なります。
社宅・住宅手当は「生活を支える福利厚生」
社宅制度や住宅手当は、従業員の住居費負担を軽減する制度です。
特に若手社員や新卒採用では人気が高く、採用活動でもアピールしやすい福利厚生と言えます。
一方で、住宅手当は給与として扱われるため、所得税や社会保険料の対象となります。
また、社宅制度は税制上のメリットがあるものの、物件の管理や家賃相場の変動など、企業側の管理負担も少なくありません。
つまり、「今の生活」を支える制度としては優れていますが、退職後の資産形成にはつながりません。
食事補助は満足度が高い福利厚生
近年、食事補助を導入する企業も増えています。
社員食堂のほか、電子食事券や食事補助サービスを利用する企業も多く見られるようになりました。
食事補助は、毎日の生活の中で利用できるため、従業員満足度を高めやすい制度です。
また、一定の要件を満たせば税制上の優遇を受けられることもあり、企業にとっても導入しやすい福利厚生と言えるでしょう。
しかし、こちらも資産形成につながる制度ではありません。
企業型DCは「将来の生活」を支える福利厚生
一方、企業型DCは少し視点が異なります。
社宅や食事補助は「現在の生活」を支援する制度ですが、企業型DCは「将来の生活」を支える制度です。
毎月積み立てた掛金を長期間運用することで、老後資産を形成していきます。
さらに、選択制企業型DC(給与選択制)を採用している企業では、一定の条件のもとで社会保険料の軽減につながる可能性もあります。
企業にとっては福利厚生の充実だけでなく、人件費の効率化にもつながる点が特徴です。
福利厚生は「短期」と「長期」のバランスが大切
福利厚生には、大きく二つの役割があります。
一つは、日々の生活を支える制度です。社宅・住宅手当、食事補助、通勤手当などがあります。
もう一つは、将来の安心を支える制度です。
退職金制度、企業型DC、財産形成制度などがあります。
どちらか一方だけでは十分とは言えません。
従業員が「今」安心して働けることと、「将来」安心して生活できること、その両方を支えることが、これからの福利厚生には求められています。
中小企業こそ福利厚生を経営戦略に
福利厚生は、単なる従業員サービスではありません。
採用力を高め、定着率を向上させ、企業の魅力を高める経営戦略の一つです。
そのためには、「人気がある制度」を導入するだけではなく、自社の経営課題に合った制度を選ぶことが重要です。
限られた予算の中で最大の効果を生み出す福利厚生を考えることが、これからの中小企業経営には欠かせません。
今回の比較
| 比較項目 | 中退共 | 社宅・住宅手当 | 食事補助 | 企業型DC |
| 採用への効果 | ○ | ◎ | ○ | ◎ |
| 定着への効果 | ○ | ○ | △ | ◎ |
| 会社負担の予測 | ◎ | △ | ○ | ◎ |
| 税制メリット | ◎ | ○ | ◎ | ◎ |
| 社会保険メリット | × | △ | ○ | ◎※ |
| 将来の資産形成 | ○ | × | × | ◎ |
※選択制企業型DC(給与選択制)の場合。
次回(最終回)では、「なぜ今、中小企業には企業型DCなのか」と題して、人材不足、人的資本経営、社会保険料負担の増加など、現在の経営環境を踏まえながら、中小企業における福利厚生のあり方を総括します。