中小企業の退職金制度の作り方
これまで3回にわたり、「退職金」について考えてきました。
では、実際に中小企業が退職金制度を作るとしたら、どのように考えればよいのでしょうか。
最初に決めるべきなのは、「どの制度を導入するか」ではありません。
まず、「会社は何のために退職金制度を作るのか」を決めることが重要です。
退職金制度を作る目的を決める
例えば、長く働いてくれた社員に報いたい、採用力を高めたい、社員の定着につなげたい、社員の老後資産形成を支援したい、福利厚生を充実させたいなど、会社によって目的は違います。
目的が違えば、選ぶ制度も変わります。
退職金の準備方法はいくつもある
中小企業が退職金を準備する代表的な方法には、
①会社が内部で準備する退職一時金制度
②中小企業退職金共済(中退共)
③企業型確定拠出年金(企業型DC)
などがあります。
それぞれ特徴が違います。
例えば、会社が内部で準備する方法では、会社が退職金規程に基づいて社員へ退職金を支給します。
中退共は、会社が毎月掛金を納付し、社員が退職した際には中退共から直接退職金が支払われる仕組みです。
企業型DCは、会社が掛金を拠出し、社員自身が運用商品を選んで老後資産を形成していく仕組みです。
企業型DCは「金額を約束する制度」ではない
従来型の退職金制度では、「勤続30年なら○○万円」というように、将来支払う金額を会社が決める方式があります。
これに対して企業型DCでは、基本的に会社が決めるのは、「毎月いくら拠出するか」です。
将来受け取る金額は、拠出した掛金と従業員自身の運用成果によって決まります。
会社側から見ると、毎月の掛金が明確なので、将来の退職時に突然大きな資金を用意する方式とは性格が異なります。
一方、社員には運用商品を自分で選ぶ必要があります。
そのため、制度を導入するだけではなく、投資教育を継続して行うことも重要です。
「一つだけ選ぶ」必要はない
退職金制度を考える際、「中退共か、企業型DCか」という二者択一で考える必要はありません。
会社の考え方によっては、複数の制度を組み合わせる方法もあります。
例えば、「長期勤務への報奨」という役割と、「社員自身の資産形成」という役割を、それぞれ別の仕組みに持たせることも考えられます。
重要なのは制度の名前ではなく、「会社が何を社員に提供したいのか」です。
10年後、20年後も続けられる制度にする
退職金制度は、一度作れば長期間続く制度です。
そのため、「今なら払える」ではなく、「社員が増えても続けられるか」という視点が欠かせません。
社員10人の会社が30人になったとき。50人になったとき。売上が一時的に落ち込んだとき。
それでも継続できる制度なのかを考えておく必要があります。
退職金制度は、金額を大きくすればよいというものではありません。
無理なく長く続けられることも、社員にとって大切な安心なのです。
退職金から「資産形成支援」へ
かつての退職金制度には、「会社が社員の老後資金を準備する」という考え方が強くありました。
しかし、働き方や転職に対する考え方も変化しています。
これからは、「会社が社員に資産形成の機会を提供する」という考え方も重要になってくるでしょう。
企業型DCは、そのための選択肢の一つです。会社が掛金を拠出し、社員が自分自身の資産として長期間運用する。
転職などの際にも、一定の要件のもとで資産を持ち運ぶことができます。
退職金を単なる「退職するときにもらうお金」と考えるのではなく、「社員が働いている間から、将来の資産形成を支援する制度」として考えてみる。
これからの中小企業には、そのような視点も必要なのではないでしょうか。
4回にわたり、「社長が知らない『退職金』の話」をお伝えしてきました。
退職金制度に唯一の正解はありません。
大切なのは、自社の経営方針と社員に合った制度を、無理なく長く続けること。
退職金制度は、社員が会社を辞めるときだけの制度ではありません。
社員に、「この会社は、自分の将来のことまで考えてくれている」と感じてもらうための福利厚生制度でもあるのです。